幼い頃に両親を失ったルチアは両親の親友だったアレッシオの後見の元、全寮制の学園で育った。
休暇の度に会うアレッシオに魅かれながらも成長したルチアは、卒業を機に、アレッシオへの思いを諦め、一人暮らしを始めようとするが……。
――残月――
二人の結婚式は晴れ渡った空の元、王都で執り行われた。大聖堂の司教の前でルチアとアレッシオは結婚証明書に名前を書き入れた。 「今ここに二人は夫婦となったことを認める」 司教の宣言にアレッシオはルチアのベールを持ち上げて、軽く唇を重ねた。周囲か...
――望月――
アレッシオはルチアを連れてクラウディオの会社へと向かった。結婚の承諾を得たため、アレッシオはようやくルチアの親族に顔を合わせる気になったのだ。 馬車からルチアをエスコートしながら、アレッシオが蕩けるような甘い目つきでルチアを見つめている。 ...
――朧月――
私がクリスに出会ったのは、王都にある貴族の子弟が通う学院の初等科から中等科へと進んだころだった。 中等科へと進学すると家からではなく、学院の寮に住むことを父に命じられた。 王都に屋敷を持つ貴族であれば、家から学院へと通うのが一般的だ。寮とは...
――十三夜――
あと一月ほどで誕生日を迎え、私は成人として認められる。ようやくアレッシオ様の後見を必要としない年齢に達するのだ。 アレッシオ様の元で働き始めて二年ほどが経つ。 これまでアレッシオ様のそばで、彼が幾人もの女性と夜を過ごすのを間近に見て来た。秘...
――眉月――
十三年前に私は事故で両親を一度に失った。その悲報を私にもたらしたのは両親の親友であるアレッシオ・ウリッセ・クレメンティ子爵だった。 アレッシオ様は度々我が家を訪れていた。領主であるアレッシオ様がなぜただの小作人である我が家を訪ねていたのかは...
――朔月――
「アレッシオ……、止めて……下さ……い」 「ルチア、私から逃げるな」 ルチアはシーツの海に両腕を頭上で縫いとめられた白い肢体をよじり、必死に逞しい体から逃げようとした。男の身体は逃すまいと、ルチアの唇をふさぐ。 「ふぅっ……、あ、はぁっ」 ...