月の女神と狩人

事故によって亡くなった父の遺品を取り戻すため、
ダイアナは怪盗アルテミスを名乗り、相棒のコンラッドと共に日夜、街を駆け回っていた。
ある日、ダイアナは忍び込んだ屋敷で危うく捕まりそうになる。
そんなダイアナの窮地を救ったのは、屋敷の主の息子ラファエルだった。

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15. 変貌

ダイアナは我が目を疑った。 ノーフォーク公の別荘にどうしてこの人の姿があるのか。 デヴォンシャー伯爵、アイザック・カークランドは亡き父の友人であり、ダイアナの後見人としてこれまで長い間彼女を支えてきてくれた。 「アイザック様……」 ダイアナ...
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人間になったボク

朝起きたらなんだかいつもと違う。 いつもは大きく見えるものが小さい気がする。 こういう時は顔を舐めて気持ちを落ち着けるニャ、ってこれボクの手じゃない。 人間の手だ~!!!!! ボクどうしちゃったの? 慌てて鏡のある場所へ行こうとして、驚いた...
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14.   潜入

コナーとの打合せどおりにノーフォーク公の別荘の裏口に回ったダイアナは、セキュリティシステムからの警告を受けることもなく、別荘への侵入に成功していた。あらかじめコナーにセキュリティシステムのハッキングをこの時間に実行するように頼んでいたのだ。...
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13. ノーフォーク公の別荘

「お嬢様、今日も届いたのですが……」 ミセス・ギルモアが申し訳なさそうな顔で薔薇の花束を抱えている。 「部屋に飾っておいて頂戴」 「承知しました」 ラファエルがあっさりと引き下がってから一週間が過ぎようとしていた。翌日から毎日のように何かし...
月の女神と狩人

12. 突然の求婚

「クラン子爵……ですか」 ラファエルから自己紹介を受けたコナーは鋭い目つきで彼を見据えた。 「お嬢様をお連れいただき、ありがとうございました。わたくしはシェフィールド家の執事を務めております、コナー・ハーシェルと申します」 ラファエルとコナ...
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11. 近づく距離

目覚めたダイアナは、自分の身体の軽さに驚いた。発情期に入ってからいつも付きまとっていただるさが消えている。 (あれ……、どうしたんだっけ?) 見覚えのない天井が目に入り、慌ててベッドから飛び起きた。 「うわ……」 何も身につけていない身体に...
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10. 予期せぬ再会

「見つけた……」 ラファエルが彼女の姿を見つけたのは偶然だった。 夜会の晩、自分の心を一瞬で奪ってしまった女性の身元を突き止めるため、さまざまな場所で彼女のことを聞いて回った。けれど、黒髪に金色の瞳の女性のことを知る者はいない。 唯一の手掛...
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9. ダイアナの後悔

王都にあるノーフォーク公の屋敷で、手痛い失敗を喫(きっ)してしまったダイアナは焦っていた。 (どうして……?) 注意を払って潜入したはずの場所であっさりと捕らえられたばかりか、唇を許し、愛撫(あいぶ)まで受けてしまった。ひとりの男に触れられ...
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8. 最初の奪還

ダイアナは最初のターゲットをハワード男爵に定めた。コナーが探し出した目録によれば、男爵が隠し持っているシェフィールド家の遺産は、月長石(ムーンストーン)がはめられたブレスレットだという。 幸運なことにダイアナが保有している会社にはセキュリテ...
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7. 失われた遺産

バーリントン領にあるパブリックスクールへ入ったダイアナは、優秀な成績で飛び級(スキップ)をして、そのまま全寮制の大学(カレッジ)へ進んだ。十八歳で大学を卒業したダイアナは、本格的にバーリントン伯爵として動き始めた。 両親を亡くしてから、ずっ...
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