――朔月――

「アレッシオ……、止めて……下さ……い」

「ルチア、私から逃げるな」

ルチアはシーツの海に両腕を頭上で縫いとめられた白い肢体をよじり、必死に逞しい体から逃げようとした。男の身体は逃すまいと、ルチアの唇をふさぐ。

「ふぅっ……、あ、はぁっ」

慣れないキスに息を荒くするルチアに構わず、アレッシオは唇を強く吸った。息苦しさに開けられた口に、容易く侵入を果たした舌が絡められる。

「キスには慣れていないようだな」

意地の悪いアレッシオの問いに、与えられる快感に耐えているだけで精一杯なルチアは答えられない。焦点の合わない目で天井を見つめるルチアの瞳から涙が零れ落ちた。

涙に気付いたアレッシオは涙を口で吸い取ると、再び口へと愛撫の矛先を戻す。そのまましばらく口を蹂躙していた舌は、頬をたどり、耳へと行き着いた。

強く吸われたルチアの唇は赤く色づき、天窓から差し込む月の光を受け艶めいている。

「ルチア……」

耳元で囁かれる低い声に、ルチアは微かに身体を震わせた。そのまま耳朶を食まれ、今度こそ大きく身体が震えるのを止められなかった。

ルチアの反応に満足したアレッシオは愛撫の手を胸へと伸ばした。形の良い胸にそっと手を這わせ、その形をなぞっていく。

もどかしい愛撫にルチアは知らず知らずのうちに膝をすり合わせていた。

その様子を見たアレッシオは肉食獣が舌なめずりをするように、獰猛な笑みを浮かべた。そのまま胸の蕾を抓むと、ルチアの口から高い声が漏れる。

「ひゃぁっ、ん」

ルチアの反応に満足したアレッシオは胸を重点的にいじりながらも、膝を割り込ませルチアの下肢を割る。すべらかな太腿の感触にアレッシオは興奮を増した。胸を触っていた手は腰のラインに沿って下り、ルチアの秘所へとたどり着く。

「……っや、だめぇ」

ルチアの制止はアレッシオを煽る材料にしかならなかった。割れ目に沿って撫でるだけでルチアの身体は敏感に反応を返してくる。

「感じやすい身体だ……」

アレッシオの言葉に、ルチアは頬を羞恥に染めた。これまでのアレッシオと関係を持った女性と比べられるのは耐えられない。ルチアの瞳からはぽろぽろと涙がこぼれた。

「何を泣く?」

アレッシオの問いかけにもルチアはただ首を振って、口を開くことはなかった。

問いただすことを諦めたアレッシオは愛撫の手を伸ばしてくる。花びらを割って指を探りいれると、わずかに蜜を湛え始めている。アレッシオは二本の指で花びらを広げると、花芽を探った。

「やっ、痛い!」

初めて味わう感触はルチアにとっては刺激が強すぎた。アレッシオは花びらの上からそっと花芽を撫でた。

「……ん、ふぅ」

声と共に身体を震わせるルチア。

ルチアの両腕をまとめていた片手を外すと、アレッシオは胸の頂を抓み、同時に攻め立てた。

与えられる快感に耐えるだけで精一杯のルチアは、抵抗を止めていた。

アレッシオは満足げに微笑むと、ルチアの胸元を強く吸い上げ、紅い華を散らせた。

「はぁ、はぁ」

胸の先を抓んだり、ひっかくように触れたりするたびに秘処からは蜜が溢れてくる。アレッシオは花びらに沿って、猛りきった欲望を滑らせた。蜜の力を借りて滑らかになった欲望を何度かこすり付けるように動かすと、ルチアはつま先をぴんと伸ばし、太腿の内側をビクビクと震わせた。

ルチアははくはくと大きく口をあけ息をしようとしているが、初めての快楽の頂点に呼吸さえままならない。

「イった……か?」

アレッシオの言葉にルチアは絶望に襲われた。私の身体はなんて淫らなの? もう、嫌……。こんな私はアレッシオに相応しくない。

アレッシオは達したばかりで敏感になっているルチアの身体に、欲望をこすり付け、その速度を上げた。花びらの間をぬるぬると滑る感触に、腰が蕩けるような快感が走る。腰の律動を早めると、白い欲望の証をルチアの秘所の間に吐き出した。

ルチアの身体を抱きしめながら長い吐精を終えると、アレッシオはベッドを離れた。濡らしたタオルで丁寧にルチアの身体を拭うと、自分の身体も拭いて清める。

その間、ルチアは放心したようにアレッシオのなすがままになっていた。

アレッシオは体液で濡れてしまったベッドからルチアの身体を抱き上げると、そのまま自分の部屋へと運んだ。大きなベッドへルチアの身体を横たえると、自分も隣へと身体を滑り込ませる。しっかりとルチアを抱きしめると、ようやく安心したように眠りに落ちた。

アレッシオの腕の中で身体を強張らせていたルチアは、彼が寝入ったことを確認すると、ようやく身体の力を抜いた。窓の外に見える月を目に焼き付けるようにじっと眺めながら、彼と共に過ごし始めることになったきっかけに思いを馳せた。

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