――残月――

二人の結婚式は晴れ渡った空の元、王都で執り行われた。大聖堂の司教の前でルチアとアレッシオは結婚証明書に名前を書き入れた。

「今ここに二人は夫婦となったことを認める」

司教の宣言にアレッシオはルチアのベールを持ち上げて、軽く唇を重ねた。周囲からは祝福の拍手が沸き起こる。

「幾久しくよろしくお願いいたします」

ルチアの言葉にアレッシオは顔をほころばせた。

「こちらこそ、末永くよろしくお願いする」

二人の様子を、クラウディオ現アッカルド公爵、コンスタンツォ前アッカルド公爵、アレッサンドロ前ウリッセ公爵が見守っている。

アレッシオの結婚報告と同時に、アレッサンドロは王に願い出てアレッシオがウリッセ公爵位を受け継ぐこととなった。新ウリッセ公爵とアッカルド公爵の姪との結婚は王都にいる貴族の間では話題となっていた。幸運にも参列できた人々は、二人の仲睦まじい様子に後継ぎができるのも時間の問題だと噂していた。

実際、既にルチアのお腹には赤子が宿っていた。まだ目立つほどではないが、ようやく悪阻の酷い時期を乗り切って、なんとか挙式を迎えることができたことに、ルチアの顔から喜びの表情が途切れることはなかった。アレッシオも甲斐甲斐しくルチアの世話を焼き、ルチアが無理をしないように気を配っている。

「アレッシオと結婚したなんて、なんだかまだ信じられない。」

「それは困ったな」

全く困っていない口調でアレッシオはルチアに微笑みかけた。

「何度でも信じさせてみせる」

アレッシオの言葉にルチアはこれ以上ないくらい、幸せそうに微笑んだ。ルチアの美貌と微笑みに周囲がどよめき立った。

父親譲りの天使の微笑みは受け継がれているようだ。

アレッシオは軽い嫉妬心を覚えてルチアに口づけて周囲を牽制した。

「アレッシオ……もう」

「これでいい」

アレッシオはルチアの手を引いて、大聖堂の外へと歩き出した。扉をくぐると祝福に駆け付けた人たちからのお祝いの花びらが二人に向かって振り撒かれる。

大聖堂の鐘が高らかに鳴り響き、二人の結婚を祝福していた。

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