朝起きたらなんだかいつもと違う。
いつもは大きく見えるものが小さい気がする。
こういう時は顔を舐めて気持ちを落ち着けるニャ、ってこれボクの手じゃない。
人間の手だ~!!!!!
ボクどうしちゃったの?
慌てて鏡のある場所へ行こうとして、驚いた。
歩きにくい。
人間はどうしてこんなに難しい二本足で歩いているのかにゃ?
何とか鏡の前にたどり着いて、改めて確認したらやっぱり男の子だったのにゃ。
真っ白な髪の毛に、アクアマリンの左目と、トパーズの右目は変わってない。
でも、どうしてこんなにヒョロヒョロなのにゃ?
アウレリアの弟のカールとはずいぶん体つきが違うみたいだにゃ。
(作者注:それは騎士だし、鍛え方が違うから)
鏡の前でボクがじたばたとしていると、アウレリアがドアを開けた。
「きゃっ!」
バタン!
アウレリアは急にドアを閉めて走り出した。
「どうしたの?アウレリア?」
ボクは慌ててアウレリアの後を追って、廊下を走った。
逃げられると追いたくなるのは猫だもん。仕方ないよね。
「どうして私の名前を知ってるの?」
廊下の端っこまで追い詰めたアウレリアは、ボクの顔が分からないみたいだ。
「ボクはフローラだよ。アウレリア、わからないの?」
「え?フローラ?」
アウレリアは目を白黒させている。
「そうだよ。ちゃんと使い魔の契約があるからわかるでしょう?」
「本当に、フローラ……なのね」
アウレリアはまだ信じてないみたい。
「そうだにゃ」
アウレリアは呆然とした顔で廊下に座り込んでいる。
ボクはいつものように頭をアウレリアにこすりつけようとして止められた。
「止めて、フローラ。人間の恰好の時にそんなことをしちゃダメ」
「え~?」
ボクは仕方なくすりすりを止めた。
「フローラ、何か着る物を探して来るから着替えて」
「やだ、めんどくさい」
人間が着ている服なんて、面倒くさい。
でもこの体は猫の姿よりも少し傷がつきやすいみたいだ。
「だめよ。裸のまま外へは行けないの」
「う~、わかった」
ボクがしぶしぶ頷くと、アウレリアはボクの為に服を探しに行った。
しばらくして戻ってきたアウレリアの手にはシャツとズボンとパンツがあった。
「これ、どうやって着るのかにゃ~?」
ボクはシャツを抓んだ。伸びない爪はなんだか使いにくい。
「もうっ、仕方ないわ。着せてあげる。でも、次からは自分で着るのよ」
「了解にゃ!」
アウレリアの指示に従って、ボクはパンツをはいた。
その上からズボンをはいたけど、なかなか足が出てこない。
アウレリアがズボンの裾をまくってくれたので、何とか足が出てきた。
シャツに手を通したけど、ボタンを留めるのは無理みたい。
これもアウレリアがやってくれた。
「人間は大変だにゃ~」
「フローラ、次からは自分で着るのよ?」
「無理だと思うにゃ。フローラがしてくれないの?」
ぼくはこてんと首をかしげた。
「もう、仕方がないわね」
なんだかアウレリアの顔が赤い。
やっぱりアウレリアは可愛い。
人間になったら、アウレリアはボクの目線より小さいってことが分かった。
可愛いご主人様。だーいすきだよ。
ボクが思わずアウレリアに抱きついたら、もっと顔が赤くなった。
ふふ。やっぱりアウレリアは可愛い。
なんだか眠くなってきたので、アウレリアに膝枕をしてもらった。
アウレリアはボクの白い髪の毛を撫でながら、ボクの事を観察しているみたい。
「やっぱりフローラだわ」
まだ信じられないの?
ふぁ~、ねむい。
アウレリアの手が気持ちよくてそのままボクは寝てしまった。
次に目が覚めたとき、ボクはいつもの猫のままだった。
あれ、人間になったのは夢だったのかにゃ?


文月 蓮

2013年5月から「小説家になろう」、「ムーンライトノベルズ」様サイトにて執筆を始めました。 株式会社アルファポリス様ノーチェブックスより「間違えた出会い」「仕組まれた再会」「囚われの男装令嬢」を発売中です。 株式会社ハーパーコリンズ・ジャパン様アンジェリカより「暁の魔術師は月に酔う」を発売中です。

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