葬儀の手配を終え、ナディアはぼうっと部屋に佇んでいた。
クラウディオの世話は侍女が面倒を見てくれている。
気丈に振る舞うナディアをフロレンシオが抱きしめた。
「大丈夫か?」
「ああ、……多分」
顔色の悪いナディアを見咎めたフロレンシオはナディアの頬を軽くつねった。
「ちゃんと眠れたのか?」
「少しだけ」
「私の前では無理しなくていいんだぞ」
「うん」
ナディアはフロレンシオの肩に顔をうずめた。
「覚悟はできていたはずなのに、実際に直面するとなかなか受け入れがたいものだな」
「ナディア、義父上は満足しているように見えた。そんなに悲しむな」
「ああ、わかってる」
フロレンシオの優しい口づけをナディアは受け入れた。
「明日にはいつもの私に戻っているから、今だけ忘れされてほしい」
ナディアの懇願にフロレンシオは応えた。
ナディアの服をゆっくりと脱がしていく。ナディアは与えられる快感の予感に体を震わせた。クラウディオを産んでから、体重は戻っていたものの体型が崩れたのではないかと危惧していたナディアの心配をよそに、フロレンシオは久しぶりの交合に夢中でナディアの肌を吸いあげた。
「あ……、や……そこ」
妊娠中から膨らみ始めたナディアの胸は、かなり大きくなってしまった。授乳している今はさらに膨らんでいる。フロレンシオに触れられると、先端から母乳が染み出してくる。
フロレンシオは染み出した乳を舐めとった。
「ふうん。こんな味なのか」
「フロル、やめてぇ」
「ああ、クラウディオの為に残しておこう」
そう言うと、フロレンシオは愛撫の手を下肢へと這わせた。
久しぶりに触れるナディアの体は、まるで初めての時のように強張っていた。
「どうした?緊張しているのか?」
「そうかもしれない。ずっとしてなかったし……」
ナディアは羞恥に頬を染めながら答えた。
「妊娠中のナディアも美しかったぞ」
フロレンシオはうっとりとナディアの肌に触れた。
「ナディアの肌は気持ちがいい」
フロレンシオの指が茂みをかき分けて侵入してくる感触にナディアは声を上げた。
「ぅん……あっ」
「狭くなったな」
フロレンシオの言葉にナディアは全身を紅潮させた。
「恥ずかしいから、そう言うことは言わないでほしい……」
「恥ずかしがるナディアが可愛いからいじめたくなる」
フロレンシオはゆっくりとナディアの足を撫で上げた。
ふるりと震えるナディアの顔は真っ赤になっている。涙の滲む顔にフロレンシオはいじめすぎたかと少しだけ反省する。
「ナディア、綺麗だ」
フロレンシオはナディアの口内を思う存分に嬲りながら、指で蕾をほぐしていく。ぴちゃりとした水音が部屋に響き、ナディアの体の準備が調っていることを告げる。
フロレンシオは着ていた服を素早く脱ぎ捨て、ナディアの隣に戻ってきた。ナディアの片足を持ち上げ、腰を浮かせると、フロレンシオは昂ぶった剛直を蕾に押し当てた。ゆっくりと侵入される感触に、ナディアは口に手を当てて声をこらえようとしたがフロレンシオに腕を掴まれ、叶わなかった。
「っふ、んんんんんっく」
「はぁあっ……きついな」
ぎりぎりまで引き抜いた楔を再びゆっくりと挿入する。感じる場所を擦りあげられたナディアは、体をびくびくと震わせた。
「はぁああああん」
自分の口から洩れる甘ったるい声に、ナディアはどうしようもなく恥ずかしくなる。けれどその声に煽られたフロレンシオは、ゆっくりと動かしていた腰の動きを変えて、ナディアの感じる場所を攻め始める。
「っは、やぁ、そこばっかりぃ」
「いい……の間違いだろう?」
意地悪く微笑むフロレンシオにナディアは涙の滲む目でフロレンシオを睨んだ。
「意地、悪ぅ」
フロレンシオは腰の律動を速めていく。ナディアは急激に快感が膨れ上がるのを感じた。あさましい欲望に身を焦がしつつも、こうしている時が一番生きているという実感がある気がして、ナディアは腰をくねらせた。
「フロル……、もう、だめぇ」
「いいぞ。ナディア」
限界を訴えたナディアはそのまま快楽の頂点を極め、忘我の淵に突き落とされる。
「あああぁぁっ!」
続いてフロレンシオも己の欲望を解放した。
「はあっ」
フロレンシオは力の抜けた体をどうにかナディアの上からどかし、隣に転がった。
そのまま眠りそうになっているナディアの体を拭いて後始末をすると、フロレンシオは自分の体も手早く拭き清めた。
「ナディア、愛している」
「私……もあいし……」
ナディアは半分眠りの淵に落ちながら答えた。
フロレンシオはナディアの様子にくすりと笑うと、上掛けを二人の上にかけて眠りについた。
何も考えずに眠れたナディアの顔は、翌朝少し顔色がよくなっていた。
無事マウリシオの葬儀を終えたナディアは鳴らされている鎮魂の鐘に父親を見送った。
「父上、私は幸せになります。どうか心配なさらないでください」
ナディアは心に祈りを刻んで空を見上げた。
辺境の空は晴れ渡り、雲ひとつ浮かんでいない。父の門出にふさわしい日に、ナディアは微笑んだ。
ナディアが幸せになる為の鍵は全てその腕の中にある。
愛しい人と、大切な子供、そして大切な人が側にいる。生きているだけでとても幸せな事だとナディアは思った。
フロレンシオに後ろから抱かれ、腕の中にクラウディオがいる。これ以上の幸せがあるだろうか。
ナディアの顔は晴れ晴れとしていた。