12. 溺れる

「ああ、アルファ」

イリヤはシャワーを止めると乱暴に全身をタオルで拭い、ぐったりしているレイを抱えてベッドへと戻る。

快楽の淵をさまようレイは荒くなった息を整えながら、イリヤに体を預けていた。

レイの体を横たえたイリヤは力の抜けた足を押し開き、大きく広げさせた。露わになった秘部からは水ではなく蜜が溢れはじめていた。

立ち上る濃密な蜜の香りを嗅いだイリヤは、ためらうことなく秘密の花園へと口をつけ、溢れる蜜を啜った。

「っあぁっ!」

いきなり強烈な刺激を与えられたレイの体は大きくのたうつ。

目の眩むような快感が次々とレイを襲い、嵐の中に放りこまれた小舟のようにレイの心と体を苛む。イリヤはレイの内部に舌を侵入させ、執拗に花びらを舐め、花芽を甘噛みし、内部を解していく。

強く花芽をいじられながら、レイはもう何度目になるか分からない絶頂を味わっていた。

「はぁっ、はぁっ」

大きく肩で息をするレイを満足そうに見やると、イリヤはおもむろに避妊具を着け、性急な動作でレイの体を貫いた。

「あぁ」

蕩けきったレイの体はいきなりの挿入にも難なくイリヤを受け入れた。

「ああっ、アルファ」

抵抗しないレイの様子に、イリヤは柔らかできつい内部の感触を夢中で味わう。レイの感じる部分を探りながら、剛直の注挿を繰り返した。

溢れ出たレイの蜜がぐちゃりと妖しい音を立てる。レイは熱に浮かされたようにイリヤの動きに酔っていた。

「イリヤ、もっと」

「お望みのままに」

イリヤは限界まで剛直を抜くと、一気に奥まで突き立てる。

「ああっ。アルファっ!」

――ああ、堪らない。

イリヤはレイの方から求めてくれたことが嬉しく、喜びに舞い上がった。わずかなりと彼女の心を手に入れることが出来たのかもしれない。

――アルファ、貴女の心がほしい。

――もっと、もっと。

――私にしか反応しないように、アルファの体に自分を覚えこませたい。

レイは生まれて初めて自分が制御できない状態に陥っていることに気が付く。

けれど時はすでに遅く、全てはイリヤの腕の中だった。

イリヤの愛撫に敏感に反応を返す体は、自分の物ではないかのように感じられる。

「ああっ。イリヤっ、もうっ!」

体の奥に燻る熱を解放したくて、レイはイリヤに懇願する。

――もう、耐えられない。どうにかして、この熱から解放してほしい。

イリヤはレイの願いに応えた。

イリヤの腰の律動が早まり、深く、浅くレイの感じる部分を余すところなく満たしていく。

「あ、あ、あぁ」

レイは大きく口を開き、イリヤから与えられる快感を甘受した。脳内を白い電撃が駆け抜け、意識を闇へと染めていく。失墜するようなふわりとした感覚と共に、レイは意識を闇に飲まれた。

レイが極まったことを感じ取ったイリヤは、ようやく自分に欲望を解放することを許す。

長い放出を終えたイリヤは大きく息を吐くと、レイを抱きしめた。

気を失っているレイは穏やかな顔をしていた。

気の強い女豹が自分には心と体を許してくれている。

そう感じたイリヤはこれまで感じた事の無い喜びが胸に湧き上がるのを感じた。

――この人のすべてが欲しい。

――檻に繋いで、誰の目にも触れさせたくない。

けれど、この人が飼われることを良しとするような大人しい女性ではないこともよくわかっている。

レイは原野(げんや)にあるからこその美しさを持っていた。

――ああ、どうしようもないほど私はこの人を求めている。美しい曲線を描く体と、気の強いところも、脆い部分も持ち合わせたすべてが愛おしい。

――この女性の魂に焦がれて止まないのだ。

イリヤは一時でもこの腕の中に彼女を抱けることを幸運に思った。

だが、手にした途端にもっと欲しくなる。

――自分の腕の中で疲れた彼女を憩わせ、安らげたい。そして、それ以上に私の手の中で彼女を嬲ってみたい。

「っふ」

いつも冷静だと言われている自分が嘘のようだと、イリヤは自らを嘲笑った。

これまでこんなに女性が欲しいと思ったことは一度もなかった。けれど、アルファに出会ってからというもの、自分でも異常だとわかるほど執着している。

――この人の心を手に入れて見せる。

イリヤは固く決意をする。

レイを抱きしめているうちに、再び欲望が張りつめていく。際限のない欲望にイリヤは笑うしかなかった。

「折角眠っているのを起こすのは忍びないですが、もう少し付き合っていただきましょう」

イリヤは体の欲求に従って再び動き始めた。

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