おなかすいたにゃ。
ママはボクに自分に名前も付けてくれなかった。
2、3日はママがおっぱいをくれた。
でも、餌を取りに出かけたきり、帰ってこなかった。
ボクはおなかが空いた~。我慢できにゃい。
外に出てみようかにゃ。
生まれて初めて外へ出た。
いい匂いがいっぱいする~。
でも、ママの匂いはどこだろう。
歩いているうちに、ボクの白い毛並みは泥で汚れてしまった。
そんなことよりおなかすいた~。
なにか食べ物がほしいにゃ。
目の前に現れたのは、白い手。
いきなり首をつかみあげられて、びっくりした。
「お前、どこから来たの?こんなに汚れて…。」
「にゃ~。」
綺麗な女の子だった。
温かい家に連れて行ってくれて、ご飯をもらった。
美味しいにゃ~。
幸せだにゃん。
ボクはおなかが一杯になるまで食べた。
げっぷが出た。
「けぷっ。」
「あらあら、食べ過ぎよ。もう少ししたら、体を洗おうね。」
女の子が言った。
洗うの?
何それ?
ボクはちゃんとなめなめしてるから、きれいだもん。
「にゃにゃ。」
「さあ、洗うわよ。大人しくしててね。」
ぬるいお湯を掛けられた。
にゃ~!怖いにゃ~。ママ、助けて~。
「にゃにゃにゃにゃにゃー。」
バタバタと暴れたけど、女の子は捕まえた手を放してくれなかった。
泡でごしごしされた。
いやにゃー!
「にゃー。」
泡はすぐ消えてしまった。
またお湯を掛けられた。
黒く汚れたお湯が流れて行った。
「みゃみゃ~。」
やめて~。
ボクはいやだって言ってるのに、女の子はまたあわあわで体を洗い始めた。
「にゃぁ~。にゃぁ~。」
やだ~。
でも今度は少し泡立った。
またお湯を掛けられる。
「くちゅん。」
くしゃみが出た。
「あらあら、風邪かしら?」
でも手を止めてくれない。
また泡でごしごしされた。
疲れて来たにゃ~。
「みゃー。」
「そうそう、おとなしくしてね。もうすぐ終わるから。」
お湯を掛けられた。
もう、流れた水はきれいだった。
ぶるぶるっとしよう。
ぶるぶる。
「きゃぁ!つめたっ!」
女の子にかかってしまった。
「もういいわ。一緒にお風呂に浸かりましょ。」
「にゃ?」
そんなにたくさんの水に浸かったらボクは死んじゃうにゃ。
怖いにゃ~。
「みゃみゃ~。」
女の子に捕まれて、お風呂に入った。
怖かったけど、女の子がちゃんと支えていてくれた。
ちょっとだけ怖くなくなった。
「ふにゃ~。」
おもわず気持ちよくて声が出た。
「ふふふっ、かわいい。お前の名前は?」
「みゃー。」
ないよ。
「無いのかな~。じゃあ、私がつけてもいい?」
「にゃ!」
いいよ。
「そうね~。白い毛並みに、左目がアクアマリンの水色、右目がトパーズの黄色ね。まるで花みたいね。
きめた、フローラよ。
お前の名前はフローラ!」
「にゃうん!」
気に入った。お花っていう意味だ。
あれ、ボクはなんでこんなこと知ってるのかにゃ?
女の子が驚いた顔をしてる。
なんでかにゃ?
あれ?
なんか体が大きくなったような?
「お前、ただの猫じゃなかったのね。」
女の子がしゃべった。
ん?
どういうことにゃ?
「どういうことにゃ?」
思ったことがそのまま口に出た。
あれ?ボクは喋れたっけ?
「フローラ、貴方は魔猫だったのね。私が名前を付けてしまったから、使い魔になってしまったの。」
「そうにゃの?」
でも、べつにこの子ならいいかにゃ~。
「君のにゃまえは?」
「私?私はアウレリア・フォルトナーよ。よろしくね。」
うん。アウレリアか。
「よろしくにゃ!」
お風呂から出て、タオルでいっぱいごしごしされた。
またぶるぶるしそうになったけど、アウレリアが冷たいって言うから我慢した。
ぼくは体中をなめなめして、毛並みも綺麗になった。
どや!
ってやるんだよね?
後でわかったけど、ボクは男の子だ。
フローラは女の子につける名前。
ボクが男の子だって分かったアウレリアは、すっごくたくさん謝ってくれたけど、綺麗な名前でボクは気に入ってるにゃ。