8. 新たな封印

レオの指定した日はすぐにやって来た。この日の為にラファエラとガブリエレは申し合わせて休みを取っていた。

フェルナンドには申し訳ないが、なにかと反対されそうなので黙って準備を進めていた。

「お客様がお見えです」

テレーザが来客を告げると、それまで居間で寛いでいた二人に緊張が走る。

「こちらへ案内して頂戴」

「わかりました。お嬢様」

しばらくするとテレーザがレオを連れて部屋に入ってきた。レオと顔を合わせたラファエラは気まずい思いに駆られ、目をそらした。

レオの眉間にかすかに皺が寄ったが、気づく者はいなかった。

(私と顔を合わせるのがそんなに嫌だったのだろうか?)

レオの胸に不快感が押し寄せる。しかしその感情の正体が明らかになる前にガブリエレの言葉によって意識が霧散する。

「早速だが、封印に入ろう。ラファ、横に慣れる場所はあるか?」

「私の部屋なら……」

ラファエラの言葉に三人はそろってラファエラの部屋へと移動した。

「横になって背中を出してほしい」

ガブリエレの要求にラファエラは素直に従った。背中が大きく空いたドレスを身に付けていたので、そのままベッドの上にうつ伏せに横たわる。

「いくぞ、レオはよく見ていてくれ。基本的には念じるだけでいい」

「わかった」

ガブリエレはラファエラのあざの上に手をかざし、力を集中し始める。

「レオ、君の手をここに」

レオは指示された通り、ガブリエレの手に自らの手を重ねた。

「なんだか……熱い気がする」

「そうだ、いいぞ。その調子だ」

二人の力が合わさり、ラファエラの背中に注がれる。けれどあざはわずかに色を薄めただけで、それ以上の変化は見られない。ガブリエレは舌打ちする。

「やはりこれだけではだめか」

「どうすればいい?」

レオは軍人らしい冷静さで次の方法を訪ねてくる。

「力で封じ切れない場合は、体液を使う。これまでは俺の唾液で封じることが出来たのだが……」

「それは私もしたぞ」

「ああ、だがもう一度力を込めながら舐めてみてくれないか?」

「わかった」

レオは顔色一つ変えずに指示に従った。ラファエラの背中に顔を近づけ、唇を寄せるとぺろりとラファエラのあざを舐めた。

ラファエラはその感触に体をびくりと震わせた。

レオが何度か舌を這わせるが、やはりあざの色に変化はない。次第に羞恥に耳まで赤くしたラファエラが耐え切れずに叫んだ。

「もう、やだ。こんなの!」

「ラファ、気持ちを落ち着けて。力が暴走してしまう!」

ガブリエレの忠告は遅きに失した。

「やぁ、痛い、痛い、いたいーーーーーー」

興奮したラファエラの背中が盛り上がり始めてしまう。

「まずい、翼が現れる!」

ガブリエレの叫びに、レオはガブリエレの目を見つめた。

「どうすればいい?」

「こうなってしまったら、どうしようもない……いや、一つだけ不確かだが方法がある。ラファを……抱いてくれ」

「……は?」

(なんと言った?)

予想もしていなかった言葉に、冷静なレオの仮面がはがれる。

「抱いて彼女の体に精を放てば、魔力を押さえられるはずだ」

「正気か?」

レオの問いにガブリエレは頷いた。

「俺は外で待っている。ラファを頼む」

ガブリエレはラファエラの力になれない自分に、どうしようもないやるせなさを胸に扉を閉めた。

「ラファエラ、こちらを向け」

ラファエラは痛みを遮断するように、体を丸くしてうずくまっている。レオの声に、わずかに顔を上げた。

本意ではないが、本職がそう言っている以上指示に従うほかない。

「私は今から君を抱く。封印するにはそれしか方法がないらしい」

「嫌っ!」

(抱かれるなんて、絶対に嫌。それもレオになんて)

「私だって本意ではないが、バッティスタがそういっている以上、私にはそれに従うほかない」

二人がそんなやり取りをしている間にも、ラファエラの背中から白い光が漏れだしている。

その光を見たレオは舌打ちして、ラファエラのドレスを脱がせにかかった。なんとかラファエラの体からドレスをはぎ取ると、背中からラファエラの胸に手をまわして胸をすくい上げるように揉みあげた。

「っや、あ……」

初めての感触に、ラファエラの抵抗が少しだけ弱まる。レオはそのまま手を胸に這わせながら、ラファエラの背中に唇を落とし、強く吸い上げた。背中に幾つもの赤い花が散っていく。ラファエラは痛みと共に、ちりっとしたむず痒い感触に襲われ、体を慄かせた。

「はぁ、はぁ、や……め……」

ラファエラの抵抗を抑えて、レオは確実に交わるためにラファエラの体を解していく。レオの手がラファエラの秘所に伸びた瞬間、ラファエラの背には純白の羽を持った翼が顕現した。

「いやぁ、きゃああぁー」

ラファエラは背中の焼けつくような痛みに悲鳴を上げた。現れた翼は折りたたまれた状態でも、ラファエラのつま先に届きそうなほど大きい。

(痛い、痛い、痛いー)

レオは神秘的な光景に思わず翼の付け根に口づけを落とした。不思議と嫌悪感は湧かなかった。滑らかな白い背中に、輝くような純白の翼はよく似合っていた。

羽の付け根に舌を這わせると、翼が震える。

「感じるのか?」

ラファエラの瞳は焦点が合っていない。ラファエラははくはくと荒い息を繰り返し、痛みのために溢れた涙が頬を伝っている。

レオは可哀そうに思いながらも、再び秘処へと手を伸ばした。今度はさしたる抵抗もなく、花びらに触れることが出来る。あまり濡れていない蜜口をそっとなでながら、羽の付け根にも舌を這わせると、蜜口に濡れた感触を感じた。ようやく快感を覚え始めたラファエラの身体は、次第に蜜をあふれさせ始めた。胸の頂をくすぐる様に触れると、蜜の量はさらに増した。

蜜を指に纏わせ、花びらの間を探ると蜜の滑りを借りて蜜壺は容易く指を飲み込んだ。

「……っは、くぅ」

「もう少し我慢して」

(早くラファエラを楽にしてやりたい)

レオは内部を探る指を増やしていく。その度にラファエラの背中は反り返り、折りたたまれた翼が大きく羽を広げた。

「っや、やめ……」

「すまないが、我慢しろ。ここを解さないと中に入れない」

「あぁ……」

ラファエラの瞳からは涙がとめどなく溢れた。

レオの指が三本に増やされたところで、ようやくラファエラの蜜口から指が抜き取られラファエラは少しだけ体の力を抜いた。

次の瞬間、ラファエラの腰をレオの手が押さえつけ、欲を持った灼熱の楔がラファエラの蜜口を背後から貫いた。

「いやあぁぁーーーー」

ラファエラの翼が大きく羽ばたくように動き、飛び散った羽が宙を舞った。

ラファエラの口から洩れる悲鳴を宥めるように、レオは首筋に舌を這わせた。

「ふぁ、あ……、はぁ、あん……」

少しだけラファエラの体から力が抜けたことを感じ取ったレオは、最奥まで腰を進めた。

「痛い、いたい、いや、やめて」

(すまないが、私は気持ち良すぎる。せめてもう少し体になじむまで我慢してくれ)

泣きじゃくるラファエラの痛みが治まるまで、レオはじっと耐えていた。嗚咽が少し小さくなった頃合いを見て、腰を動かし始める。

「は……あ……」

最初は痛みに悲鳴を上げていたラファエラの声に、次第に別のものが混じり始めた。

(よし、いいぞ)

「もう少しの我慢だ」

レオはなるべく早く終わらせるように、腰の律動を速めた。

「あ、あぁ……はぁ」

「っく」

レオは欲望を解放し、ラファエラの奥底に精を放つ。その瞬間、ラファエラの背中の翼は一瞬にして掻き消えた。背中には赤い吸い跡以外には染み一つなく、大きな翼があったことなど嘘のようだった。

(これでいいのか?)

ずるりと萎えた欲望を抜き取ると白濁と共に破瓜の血が溢れて太腿を伝う。レオは事後の始末を終え、ラファエラの様子を窺った。気を失ったのか、呼びかけても返事はない。きちんと胸が規則正しく動いていることを確認して、白い裸身に布団を掛けて隠した。

辺りに飛び散った白い羽と濃厚な精の匂いだけが現実であることをレオに思い知らせた。

空気を入れ替えるために窓を開けると、レオは扉を開けた。廊下には憔悴した様子のガブリエレがうずくまっていた。

「封印できたと思う。確認してくれ」

レオの言葉に、ガブリエレはふらりと立ち上がるとベッドに眠るラファエラに近づく。掛布をそっとめくり、背中のあざが無くなっていることを確認する。

「ああ、大丈夫だ」

レオはガブリエレの言葉を聞くと、何も告げずに屋敷を立ち去った。

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