「お手並み拝見といこうか」
イリヤに心を許すつもりのないレイは不敵に笑った。
「口説き文句ごときに落ちてくれる人ではなさそうなので、まずは体から籠絡しようかと思います」
イリヤの宣言にレイは身を強張らせた。
「ふふっ、本当に可愛らしい人ですね」
「なっ!」
レイは顔を赤く染め、言葉を詰まらせた。
生まれてこの方、可愛げがないとか、態度が大きいという悪口は聞いたことがあっても、可愛いと褒められたことなど一度もない。
「とりあえず、体を洗いましょうか。今日は一日中潜っていたから疲れたでしょう?」
レイが黙り込んでいると、イリヤはレイの手を引いてシャワーブースへと向かう。
イリヤはレイの服を慣れた手つきで脱がせると、自身の服も脱いで一緒にシャワーブースの中へと入った。
「髪を洗いますよ」
「ああ」
シャワーのノズルを捻ると、適温になるまで待ってイリヤはレイの髪の毛を濡らした。見る見るうちにレイの赤毛の色が濃い赤色へと変化していく。
イリヤの手は武骨な指からは想像もできないほど丁寧に、ゆっくりとレイの髪の毛を濡らしていく。洗髪料を手に取ると、イリヤは丁寧にレイの髪の毛を洗い始めた。
マッサージするように、頭皮を優しく洗う手の感触のあまりの心地よさに、レイはうっとりとため息を漏らした。
レイの様子に、イリヤは満足げな笑みを深くする。
髪の毛を洗い終えると、コンディショナーを髪の先に撫でつけていく。髪の毛を洗い終えると、ボディスポンジにボディソープを垂らして泡立てる。
「アルファ、髪の毛を持ち上げておいてくださいね」
「ああ」
イリヤの言葉に素直に従い、レイは水気を含んだ髪の毛を持ち上げた。髪の毛を洗う時と同様に丁寧な手つきでレイの体を泡で覆っていく。
レイは少しくすぐったく思いながらもレイの好きなようにさせていた。
イリヤの指が時折くすぐる様に肌の上を滑る。その度にレイは体の奥が疼くような感触に襲われ、体を震わせた。
「ちゃんと持っていて下さいね」
「わかっている」
レイの声は苛立ちを含んでいた。
イリヤは自分の手が及ぼす効果を知りながら、そ知らぬふりで体中を撫でまわす。体を洗い終えた手は名残惜しげにレイの体から離れていった。シャワーで泡を洗い流すと、イリヤは待ちきれず肌に舌を這わせた。
「……ん、っはぁ」
レイはシャワーの流れる音を聞きながら、イリヤの与える熱に酔いしれた。
イリヤの体はレイの体に密着し、厚くしなやかな筋肉のしっとりとした感触を伝えてくる。レイは主導権を取り戻そうとイリヤの体に手を伸ばした。
思わぬレイの反撃に、イリヤは慌てた。
「アルファ、だめです」
「お前ばかり、ずるい」
普段のようなレイの強気な態度ではなく、上目づかいで見上げられたイリヤは、その姿態に心臓を打ち抜かれたように固まった。
「ああっ、もうっ。せっかく我慢していたのに、どうなっても知りませんよ」
イリヤはそれまでの冷静さをかなぐり捨て、荒々しくレイの胸に吸い付いた。次々と赤い吸い痕が胸元へ散っていく。
「あ、あ」
レイは声を押さえられず漏らしてしまう。
――吸いつかれた場所がちりちりと疼く。ああ、気持ちいい……のか?熱い。
レイの体はシャワーブースの壁に寄り掛からなければ、立っていられないほど足の力が抜けてしまった。イリヤの体がレイを閉じ込めるように覆いかぶさってくる。足の間にイリヤの足が割りいれられ、レイは熱い吐息を漏らす。
「はぁっ」
壁に背中を預けたままレイはイリヤのキスを受け入れた。
深い口づけにレイは頭がくらくらとし始める。イリヤはレイの艶めかしい唇にますます溺れていく。レイの唇が腫れぼったくなるまで、存分に吸い尽くすとイリヤは愛撫の手を体の隅々へと這わせ始めた。
レイは激しくなる愛撫に立っていられず、イリヤの首に縋りついた。
「ファイ……」
「お願いです。イリヤと呼んで。貴女には名前で呼ばれたい」
「イリヤ、もっ……と」
「ご随意に」
決定的な愛撫を与えられず、レイは焦らされ懇願した。
イリヤはレイの願いを即座に叶える。レイの足を抱えあげ、秘部を露わにすると秘列に指を這わせた。秘められた蕾に触れられると、レイの体は大きく震える。
「ああ、感じてくれていたのですね」
レイの反応を見ながらイリヤは望みを叶えるべく指を動かした。
「あ、ああ」
レイは宙を見据えたまま、与えられる快感を甘受した。
眦からシャワーの雫なのか涙なのかわからないものが滲む。レイは滲む視界の中で快楽の頂点を極めた。