33. 辺境伯の不安

夕食を食べ終えた三人は娯楽室へと場所を移した。

「そう言えば、こちらへ来る前にアストーリに寄って来たんだが、最近野盗がよく出没するという話を聞いたよ」

ナディアは辺境でも北に位置する街の名前を耳にして、アストーリの付近を管理する代官からの報告書を思い出していた。

(その様な報告はなかったはずだが……?)

ナディアは首をひねった。フロレンシオの顔を見るが、彼も記憶が無いらしい。

「そのような報告は来ていない」

ナディアの顔が真剣な物になった。

「いつ頃の話だ?」

フロレンシオも鋭い顔つきになってダンテに問いかける。

「半月くらい前に立ち寄った時に聞いた話だからね、もう一月くらいは経っているのじゃないかな」

「やはり、早めに領地の視察に行くべきだったな」

ナディアは自嘲した。

(だが、今の状態の父を置いてこのベネットの街を離れる気が起きなかったのも事実だ。アストーリには直接出向いた方がいいという予感がする。けれど離れている間に、父にもしものことがあれば……)

ナディアは苦悩した。

「ナディア、私でよければアストーリへ行こう」

「フロル、いいのか?」

フロレンシオの申し出にナディアは素直に頷くことができなかった。

「私だって辺境伯の夫だ。ナディアの役に立ちたいと思っている」

「本当に君たちは仲がいいんだね。じゃあ、僕はフロレンシオがいない間、ここに滞在することにするよ。何か手伝えることがあるかもしれないし」

ダンテもナディアの不安を見過ごせなかったらしく、協力を申し出てきた。

「ありがとう、フロル、ダンテ」

「どういたしまして、ナディア。ただできればオスバルドを貸してほしい。彼なら領のことをよく知っているだろう」

フロレンシオの言葉にナディアは頷いた。

「ああ、他にも数名連れて行ってくれるか。野盗が住み着いていた場合、アストーリの自衛団だけでは対処できない可能性がある」

「ああ、わかった」

「ダンテも、知らせてくれてありがとう」

「いいや、僕にはこれくらいしかできないからね」

交易を主な産業とするバローネ家は様々な場所を行き交いしている。ダンテはその場所で得た情報をいつもナディアに知らせてくれる為、非常に助かっていた。

「そうとなれば準備が必要だし、そろそろ失礼するよ」

フロレンシオはナディアを立たせると、娯楽室を出て行こうとする。

「おやすみなさい」

「おやすみ、ナディア」

ダンテは切なげな顔で手を振った。

フロレンシオに手を引かれナディアは寝室へと足を向ける。寝室に足を踏み入れた途端に、ナディアは唇を塞がれた。

「ん……フロ……ル」

いつになく性急な口づけに、ナディアはすぐに体から力が抜けてしまいそうになる。崩れ落ちそうになる体をなんとか支え、フロレンシオの首に縋りつく。

「ナディア、愛している」

「どうした、急に?」

不安げなフロレンシオの顔にナディアの顔も曇る。

「あんまりダンテと仲がいいと、不安になる」

「だってダンテは兄みたいな存在で……」

「あいつの名前を呼ぶな」

フロレンシオの口づけが再びナディアを襲い、反論を封じられた。

「今日は朝まで覚悟して?」

フロレンシオの言葉にナディアは体を震わせる。

「ちょっと、それは……許して」

「しばらくナディアと離れるんだ。しっかり体に刻みこませておかないと」

「ん、っあ、……っふ」

口づけの間にもナディアの服は次々と脱がされ、床に布の塊を作っていく。フロレンシオは器用にナディアの服を脱がせると、自分の服も脱ぎ捨てた。

互いに一糸まとわぬ姿になると、フロレンシオはナディアの胸に触れ始める。

ナディアはいつの間にかベッドの上に体を横たえられていることに気がついた。フロレンシオはナディアの胸に覆いかぶさり、頂を口に含んでいる。その間もフロレンシオの手はナディアの体を優しく撫でている。

「っや、あぁ」

胸を強く吸われ、ナディアはおもわずフロレンシオの頭をつかんだ。

「気持ちいいか?」

「きもち、いい……」

ナディアはフロレンシオの問いかけに、恍惚としながら体を預けた。フロレンシオはナディアの様子に笑みを浮かべた。

「どうしてほしい?」

「もっと……フロルがほしい」

「私もナディアが欲しいよ」

フロレンシオはナディアの要求に応えるべく、秘所に手を這わせ始めた。そっと茂みを撫でられ、ナディアは体を震わせる。

「……っああん。フロルっ」

もどかしい愛撫にナディアは腰をくねらせた。

「先にいっておいた方がいいな」

フロレンシオは秘列にそって指を動かし始める。ナディアは快感に耐えきれず、フロレンシオの首に縋りついた。

ナディアの耳元にフロレンシオの熱い吐息がかかる。早められるフロレンシオの指にナディアはただ声を上げていた。

「フロル、フロルっ!」

「いいよ、ナディア。いって」

ナディアが限界を訴える声に、フロレンシオは首筋をきつく吸い上げた。

「ぁあああ、っああああぁん」

体中を震わせて、張りつめていた体がゆっくりと力を失っていく。ナディアの極まった顔を存分に堪能したフロレンシオはようやく愛撫の手を止めた。

「ナディア、気持ち良かった?」

ぼんやりと焦点の合っていない目でナディアはこくこくと頷いた。

「うん、すごく気持ちよさそうだった。次は私も気持ち良くさせて?」

フロレンシオの願いに答えるように、ナディアはフロレンシオの昂ぶった剛直に手を伸ばした。

「っナディア?」

フロレンシオは予期していなかったナディアの仕草に驚きを隠せなかった。フロレンシオはナディアに押し倒され、ナディアが剛直を握りこむ。何度か擦ったあと、ナディアは手を添えながら、剛直を口に含んだ。

「ナディアっ……!」

温かくねっとりとした感触に、フロレンシオは思わずうめいた。大きさを増した剛直はナディアの口に収まりきらず、先端だけが熱に包まれる。ナディアは一生懸命に舌を這わせながら手をあわせて動かした。

「あぁ、ナディア。どこでそんな真似を……」

「侍女に教えてもらった。結婚したら刺激が足りなくなるから、こうするといいって教えてもらったんだ」

ナディアは答える間も手を休ませず動かしている。

(誰だそんなことを教えたのは……!)

フロレンシオは嬉しいような、自分が教えたかったような微妙な気持ちで、ナディアの愛撫に内心嬉しい悲鳴を上げていた。

「上手だよ、ナディア……はぁ」

裏筋を舐め上げられ、フロレンシオの腰が揺れる。

「もう、だめだ。ナディアっ」

危うく昇りつめそうになり、フロレンシオはナディアの愛撫の手を止めた。体勢を入れ替え、ナディアを押し倒す。フロレンシオがナディアの秘所に触れると、蜜が溢れて滴っている。

「こんなに、濡らせて……いい子だ」

フロレンシオは我慢できず、先走りの涙を流す剛直をナディアの蜜口にあてがう。ナディアはフロレンシオの首筋につかまりながらその瞬間を待っていた。

ゆっくりとフロレンシオの楔が体を進んで行く。何度体を重ねてもなかなか慣れない感触に、ナディアは息を詰める。

「フロルっ!」

「ああっ、ナディア。そんなにきつくしたらっ……」

フロレンシオはすぐにも果ててしまいそうな快感をなんとかやりすごす。しばらくナディアの中でじっとしたまま、フロレンシオは快感の波が通りすぎるまで待った。

「フロル……」

「ナディア、私のことを忘れるなよ」

「忘れたりしないっ」

「ああっ、ナディア」

フロレンシオは耐えきれずに、腰を動かし始めた。ゆっくりとナディアに自分の形を覚えこませるように、ゆっくりと剛直を抜き差しする。

「フロルっ!やぁ、だめぇ」

「だめじゃないよ」

フロレンシオはわざと焦らすように、ナディアの感じる部分をゆっくりと穿った。

「あぁん」

ナディアの腰を抱えあげ、フロレンシオは更にナディアの奥に体をうずめた。

「あぁ、ナディア……」

フロレンシオもナディアの熱に耐えきれず、欲望を極めようと速度を上げ始める。がつがつと欲望のままに腰を振り、ナディアに打ち付ける。そのたびにナディアの体が跳ね上がり、口からは嬌声がひっきりなしに上がった。

「フロル、もう、いってしまう」

「ああ、私も一緒にいこう」

フロレンシオが一層強くナディアを突き上げると、ナディアが体を震わせながらフロレンシオを締め付けた。フロレンシオもナディアが極めたことを確かめると、同時に熱を吐き出した。

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