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一一. 魔法都市カレン  

一晩眠った栞は驚くほど回復していた。泣き疲れてそのまま眠りについた筈なのに、瞼も腫れておらず、すこぶる快調だ。 宿で朝食を済ませると、三人と一匹は今日も元気にカレンの街に向かって歩き出した。所々で休憩をはさみつつも、栞たちは思ったよりも早い...
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一〇.  異世界の夜

エドワードが交渉して確保したのは鄙びた宿屋だった。三、四人が泊まれる部屋がいくつかあるだけの民宿のようなところだ。当然、一人用の部屋などなく三人で一部屋を借りることになった。 歩くだけで体力を消耗した栞は、部屋に案内されるなり倒れこむように...
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九. 旅路

栞は黙々と考えながら街道を歩いていた。 魔物とはどうやって生まれるのか? 栞の頭の中はそのことで一杯になっていた。元々はただの獣が、あの変なプログラムの所為で魔物化しているのだとしたら、栞はそれを消し去ることができる。あのプログラムはほとん...
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八. はじめてのバグ退治

リアムと騎獣(きじゅう)のディアンを先頭に、リアムと栞(しおり)が続く形で歩いていく。 舗装されていない街道は踏み固められ、多くの人が行き来しているのが見て取れる。栞たちと同じようにパーティーを組んで歩く者もいれば、ディアンとは違う馬のよう...
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七. 調停者の能力

「栞はいったい何をしたんだ?」 リアムは恐ろしいほど真剣な顔で栞の顔を見つめている。 「え、軽くなったら助かるって言ったでしょう? だから、プログラム……じゃなくて魔法を書き換えたの」 「ちょっと待て、今魔法を書き換えたと聞こえたんだが」 ...
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六. はじまりの街

「まずは準備をしましょう」 エドワードの言葉に、リアムも頷く。 「俺は自衛団の団長に挨拶をしてくる」 「では、僕と一緒に買い物に行きましょう。服や食料も揃えなければいけませんね」 「……よろしくお願いします」 善は急げとばかりに、診療所を飛...
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五.  旅立ちのとき

栞はすっきりとした気分で目覚めた。途中でエドワードに起こされ、飲んだ薬湯は死ぬほど不味かった。それでも薬湯のおかげなのか、熱はすっかり下がっていた。 目覚めた途端に、生理的欲求がこみ上げ、栞はトイレを探して駆けまわるはめになった。異世界のト...
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四. 僧侶エドワード

栞(しおり)は額に当てられた冷たい布の感触に目を覚ました。 夢の中で太陽神を名乗るちゃらオッサンに、いろいろと言われたような気がする。 フォボスとかいう神の所為で、死に掛けたのだという怒りが心の奥底にぐつぐつと煮えたぎっていたが、その怒りを...
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三.  太陽神フォボス

「栞(しおり)ちゃん、ごめんよ~」 栞は間の抜けた声に脱力しながら目を開けた。 辺りは白いもやに包まれ、遠くまで見通すことはできない。栞の目の前で土下座しているのは、ギリシャ風の衣装を着た仰々しい格好をした五十歳くらいの男性だ。蓄えた顎髭は...
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二. 辺境の剣士

「あなたが私を助けて下さったんですよね?」 「ああ、さっきも名乗ったが、リアム・マイラーだ」 栞はリアムが差し出した手を握り返した。 「ああ、すみません。名乗りもせず。私は栞(しおり)・長谷川(はせがわ)です」 どうやら英語圏のようなので、...
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