辺境伯の娘(完結)

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12. 凶報

「敵襲! 南門に敵接近!」 明け方の静寂が見張りの声によって破られた。 仮眠を取っていたナディアは傍らに置いた刀を取り上げ、寝床を飛び出した。すぐに南門に向かって駆け出す。途中でフロレンシオたちと合流を果たしながら、一直線に南門へと向かう。...
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11. 家出娘、逃げ出す

「ナディ、大丈夫?」 (え?) 「何?」 アリシアが心配そうな顔でナディアの目を見つめていた。 「話しかけても返事が無いし、なんだかぼうっとしているから。何かあった?」 「あった……」 「えぇ?」 ナディアの思いがけない言葉に、声をかけたア...
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10. 家出娘、混乱する

「合同演習?」 ナディアが上げた疑問の声にフロレンシオが答える。 「そうだ。月に一度、複数の騎士団と合同で訓練を行う。模擬戦形式で、私たち白百合騎士団の相手は白薔薇騎士団と紅薔薇騎士団だ」 「数に差がありませんか?」 ナディアは真っ先に浮か...
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9. 家出娘、暴れる

アリシアが選んだのはおしゃれな雰囲気のカフェだった。食堂くらいしか縁のなかったナディアにとってはかなり衝撃的だった。初めての体験にナディアは興奮を隠せない。 (ああ、これも美味しそう。こっちも捨てがたい~) どれもこれも美味しそうで、メニュ...
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8. 王都での生活

そろそろ王都に着いて一カ月が過ぎようとしていた。 ナディアは思ったより騎士団での生活が楽しいものであることに、嬉しい驚きを感じていた。 (ご飯は美味しいし、ちゃんとしたベッドで眠れるし、訓練も楽しい。このままここで過ごせたら楽しいだろうなぁ...
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7. 家出娘の恩人は

団長室に顔を出しとたん、フェリクスはあまり表情のでない顔でナディアに詰め寄った。 「お前の剣筋はどこかで見たことがある。誰に習った?」 「父です」 ナディアは正直に答えた。 「なるほど。父親の名前は?」 「マウリシオです」 フェリクスは顔色...
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6. 家出娘、白百合騎士団に入団する

翌朝、ナディアは白百合騎士団の門の前に居た。手にはロベルトからもらった紹介状を持っている。 入り口でしばらく待たされた後、案内されたのは騎士団の団長室だった。 (ちょっと待て、何で団長室なの?) ナディアの内心をよそに、案内役の騎士はさっさ...
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三. 家出娘、護衛になる

「一緒に行きましょう。どうせ行き先は一緒なのだし」 「い・や・だ!」 マルティナ王女とナディアはしばしの間、同じ問答を繰り返した。ナディアの主張を聞き入れようとしない王女との口論に疲れたナディアは、白旗を揚げた。 マルティナ王女は実にしたた...
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二. ベネディートの英雄

カルバハルとイグレシアスの間に、地下資源を巡って戦端が開かれた。すぐに決着がつくかと思われた戦は三年もの長きにわたり、両国の国力を疲弊させていた。 のちに三年戦争と呼ばれる戦いは、カルバハルがイグレシアスの産出する豊富な地下資源を求めて起こ...
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一. 家出娘、活躍する

「父上、正気ですか?」 ナディアは驚きに青い目を見張った。父マウリシオが手にしているのはベネディートの英雄と取り交わした契約書だった。 かつて、三年戦争とよばれた隣国との戦の折、戦いを終結へと導いた兵士がふたりいた。そのうちのひとり、ベネデ...
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