辺境伯の娘(完結)

Main

32. 迷惑な客人

「フロル、落ち着いて」 ナディアは険悪になる二人の間に割って入った。 「とにかく、私はフロルが好きで結婚したのだ。ダンテの気持ちはありがたいが、そう言うことだから、これからも友人として付き合ってほしい」 「ナディア、それくらいで僕の気持ちが...
Main

31. 招かれざる客

ナディアが辺境伯の爵位を継いでから三カ月が過ぎようとしていた。季節は秋から冬へと移ろうとしている。最近はマウリシオの具合も良くないことが多く、ナディアは領地の視察をずっと延期していた。収穫期を迎え、領民も忙しい為視察はもう少し後の方がいいだ...
Main

30. 辺境伯の継承

結婚式から一月ほどが経ち、ナディアはいつものように屋敷で父の代わりに執務を行っていた。フロレンシオは最近ではよく砦に出向き、兵士を指導している。オスバルドに負けない実力の持ち主として認められ、辺境軍の皆とも上手くやっている様子だ。 もともと...
Main

29. 辺境の砦

白百合騎士団が去ったあとの辺境は静けさを取り戻していた。 ナディアはフロレンシオと共に砦を訪れていた。オスバルドが二人を出迎える。 「ようやくのお出ましですな」 オスバルドのからかいに、ナディアは顔を赤くしているが、フロレンシオはどこ吹く風...
Main

28. 白百合騎士団の帰還

マウリシオは婚儀が終わったので、王への手紙をしたためていた。 自身の体調不良を理由に辺境伯の地位を娘に譲りたいという内容を記す。あわせてナディアとフロレンシオの結婚についても報告し、手紙をフェリクスに託した。 「王都に戻るときに、持って行っ...
Main

27. 未来の辺境伯の夫

「あ……」 腕の中のナディアがかすれ声を上げた。 黙ってみていると、水差しを取ろうと手を伸ばしている。 けれどフロレンシオが抱きしめている為に、ナディアの腕は水差しまで届かない。 「おはよう」 耳元で私が囁くと、ナディアは頬を染めた。 恥じ...
Main

26. 辺境の夜

フロレンシオはゆっくりとナディアのベールを外した。髪に挿された白百合も丁寧に抜き取り、床に散らばらせている。 ナディアの体は期待に震えた。立っていることが辛くなってきたナディアはベッドに腰を下ろした。フロレンシオは座ったナディアの脚を持ち上...
Main

25. 辺境の結婚式

怒涛の勢いで結婚式にこぎつけた当日、空は二人を祝福するかのように晴れわたっていた。 母のウェディングドレスを身につけたナディアは控えの間で緊張していた。白い肘まである手袋を身につけていても手先が冷たい。 既に領主の敷地内にある礼拝堂には家人...
Main

24. アリシアとの再会

ナディアは急遽決まった結婚式の準備に奔走していた。ナディアの結婚を聞きつけた領民たちから届けられた作物やお祝いの品で屋敷は溢れかえっていた。 白百合騎士団からもアリシアが手伝いに来てくれていた。ナディアは久しぶりに顔を合わせた友人にたっぷり...
Main

23. 恋人たちのひととき

「ここがナディアの部屋か」 フロレンシオは案内されたナディアの部屋を興味深げに眺めている。 (恥ずかしいからあまり見ないで欲しい……) ナディアは飾り気のない女性らしくない部屋を恥ずかしく思い、小さくなっていた。 「どうした?」 ナディアの...
error: Content is protected !!