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7. 家出娘の恩人は

団長室に顔を出しとたん、フェリクスはあまり表情のでない顔でナディアに詰め寄った。 「お前の剣筋はどこかで見たことがある。誰に習った?」 「父です」 ナディアは正直に答えた。 「なるほど。父親の名前は?」 「マウリシオです」 フェリクスは顔色...
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6. 家出娘、白百合騎士団に入団する

翌朝、ナディアは白百合騎士団の門の前に居た。手にはロベルトからもらった紹介状を持っている。 入り口でしばらく待たされた後、案内されたのは騎士団の団長室だった。 (ちょっと待て、何で団長室なの?) ナディアの内心をよそに、案内役の騎士はさっさ...
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三. 家出娘、護衛になる

「一緒に行きましょう。どうせ行き先は一緒なのだし」 「い・や・だ!」 マルティナ王女とナディアはしばしの間、同じ問答を繰り返した。ナディアの主張を聞き入れようとしない王女との口論に疲れたナディアは、白旗を揚げた。 マルティナ王女は実にしたた...
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二. ベネディートの英雄

カルバハルとイグレシアスの間に、地下資源を巡って戦端が開かれた。すぐに決着がつくかと思われた戦は三年もの長きにわたり、両国の国力を疲弊させていた。 のちに三年戦争と呼ばれる戦いは、カルバハルがイグレシアスの産出する豊富な地下資源を求めて起こ...
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一. 家出娘、活躍する

「父上、正気ですか?」 ナディアは驚きに青い目を見張った。父マウリシオが手にしているのはベネディートの英雄と取り交わした契約書だった。 かつて、三年戦争とよばれた隣国との戦の折、戦いを終結へと導いた兵士がふたりいた。そのうちのひとり、ベネデ...
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13. すれ違う思い

ラファエラは仕事を終え、黒鷲団の砦の前でレオが出てくるのを待っていた。次々と騎士たちが砦から出てくるが、なかなかお目当ての人物は見当たらない。 (レオはまだかな~) ラファエラがじっと待っていると、何人かの騎士に声を掛けられる。 「どうした...
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12. 迷い

「ラフォレーゼは俺が思っていたほど厚顔無恥ではなかったということか……」 つぶやくフェルナンドに、ラファエラは悩ましげな吐息を漏らす。少し落ち着きを取り戻したフェルナンドはソファに腰を下ろした。 「いまどき、純潔でなければ結婚できないという...
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――残月――

二人の結婚式は晴れ渡った空の元、王都で執り行われた。大聖堂の司教の前でルチアとアレッシオは結婚証明書に名前を書き入れた。 「今ここに二人は夫婦となったことを認める」 司教の宣言にアレッシオはルチアのベールを持ち上げて、軽く唇を重ねた。周囲か...
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――望月――

アレッシオはルチアを連れてクラウディオの会社へと向かった。結婚の承諾を得たため、アレッシオはようやくルチアの親族に顔を合わせる気になったのだ。 馬車からルチアをエスコートしながら、アレッシオが蕩けるような甘い目つきでルチアを見つめている。 ...
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――朧月――

私がクリスに出会ったのは、王都にある貴族の子弟が通う学院の初等科から中等科へと進んだころだった。 中等科へと進学すると家からではなく、学院の寮に住むことを父に命じられた。 王都に屋敷を持つ貴族であれば、家から学院へと通うのが一般的だ。寮とは...
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